アーセナル2021-22シーズン開幕戦 昇格チームにまさかの敗戦 サイドバックとセンターフォワードが復活の鍵
1. スターティングメンバー
▽GK
1ベルント・レノ
▽DF
21カラム・チェンバース
4ベン・ホワイト
22パブロ・マリ
3キーラン・ティアニー
▽MF
23アルベール・サンビ・ロコンガ
34グラニト・ジャカ
19ニコラ・ペペ
10エミル・スミス・ロウ
35ガブリエウ・マルティネッリ
▽FW
26フォラリン・バログン
2. アーセナル攻撃の形
2-1. スミスロウを起点とした右サイドの攻め
アーセナルの攻撃の起点は今シーズンから背番号10を付けるスミスロウだ。開幕戦では特に右のハーフスペースに流れてプレーする場面が多く見られた。
右FWのぺぺが高い位置を取り、右SBのチェンバースが低い位置を取るため、右のハーフスペースにはスペースが空く。スミスロウが右のハーフスペースでボールを持った時には、右FWぺぺが相手左サイドバック外脇のスペース、CFバログンがダイアゴナルな動きで相手センターバックの脇へランニングするシーンが見られた。(前半 8:03~,13:10~)いずれもシュートを試みたが、相手DFのブロックに防がれていた。
開幕戦ではスタメンを外れていたが、右FWにサカ、CFにラカゼットやオーバメヤンが入ってくれば結果が変わる事は間違いないだろう。
2-2. ティアニーのサイド攻撃
オフシーズンに契約延長を行った左サイドバックは今年もアーセナルの攻撃のオプションになるだろう。
アーセナルはビルドアップの時、LSDティアニーに高い位置を取らせている。左FWマルティネッリが内側に絞ってサイドのスペースを空ける事でティアニーのプレースペースを確保している。サカやオーバメヤン、スミスロウが左FWを務める際も同様になる。開幕戦でもティアニーから精度の高いクロスボールが何本も上がっていたが、中央のマルティネッリ、バグロン、ぺぺといったところが上手く合わせる事が出来なかった。
ジルーが退団して以降、クロスボールからゴールの匂いがしない感のあるアーセナルだが、ティアニーがサイドを駆け上がりペナルティエリア付近から狙うクロスボールには得点の可能性を感じる。
3. ビルドアップの課題
3-1. レノのパス選択
後方からのビルドアップは昨シーズン同様に不安定さが見られる。GKレノまでボールが下がった時、CBのマリとベンホワイトにボールが渡るシーンが多いが、(時にマリが持った時)前線への縦パスが正確に行われるシーンが少ない。前半40:40~のシーンではベンホワイトから左FWぺぺへの正確なロングボールが配給されたが、去年ダビド・ルイスが行っていたようなサイドへのロングパス、前方へのロングパスのチャレンジがあまり見られなかった。
CBからのパスが近い位置にいる選手にしか渡らない事が分かると、相手のプレッシャーは前線から強くきてしまう。開幕戦でも前線からプレッシャーを掛けられ、ジャカがボールを失う場面もあった。
解決策として、GKレノからの配給のバリエーションを増やして欲しい。多くの場面でレノはCBへのパスを選択していたが、SBのチェンバース、ティアニーへパスを行う事が出来れば相手のプレッシャーを回避する事が出来そうだ。前半36:30~のシーンではGKレノ→RSDチェンバース→MFスミスロウ→RSDチェンバース→MFジャカ→MFロコンガ→LSDティアニーと渡るビルドアップが見られた。スミスロウは右サイドに流れてプレーする機会が多いため、チェンバースとスミスロウのパス回しでプレッシャーを回避してジャカがフリーでボールを受けられるとチャンスの形が出来る。
もう1つの解決策はセンターバックの持ち上がりである。開幕戦ではセンターバックがドリブルで運ぶ場面が少なかった。今のサッカー戦術ではセンターバックもある程度相手のプレッシャーを受けた中で正しいプレーが出来ないと難しい。センターバックがドリブルして相手を引き付けてからパスを行う事が必要だろう。
4. まとめ
開幕戦で敗戦したアーセナルだが、攻撃の形は作れていた。けが人や各国代表戦で合流が遅れた選手が戻ってきた時には、ゴール前での迫力やスピード感のあるビルドアップが見られるだろう。
マンチェスターシティvsレスターシティ コミュニティシールド2021 両者が見せたビルドアップとは?
1. スターティングメンバー
青:マンチェスターシティ
赤:レスターシティ
【スターティングメンバー】
マンチェスターシティ(4-3-3)
GK ステッフェン
DF カンセロ、ディアス、アケ、メンディ
MF フェルナンジーニョ、ギュンドアン(65分 ロドリ)、パーマー(74分 B・シウヴァ)
FW マフレズ、エドジー(65分 グリーリッシュ)、F・トーレス(74分 ナイト)
レスターシティ(4-2-3-1)
GK シュマイケル
DF ペレイラ、アマーティ、ソユンク、バートランド(78分 L・トーマス)
MF ディディ、ティーレマンス(72分 スマレ)
ペレス(71分 オルブライトン)、マディソン(71分 デューズバリー・ホー ル)、バーンズ(78分 イヘアナチョ)
FW ヴァーディ(71分 ダカ)
2.マンチェスターシティ
2-1. 新フォーメーション2-3-5で見せたシティの狙い
マンチェスターシティが今シーズン取り組んでいるビルドアップの特徴は両サイドバックを内側に絞って相手を中央に密集させる戦術。センターバック2枚の前方中央にボランチ1枚と両サイドバックを配置する2-3-5のフォーメーションである。昨シーズンDFカンセロが内側に絞ってビルドアップを行う形は見せていたが、逆のサイドバックはサイドに張って幅を取っていた。両サイドバックが内側に寄ることで可能になったビルドアップを紹介する。前半29:40~の場面をご覧ください。
右サイドバックのカンセロと左サイドバックのメンディが内側に絞った状態でビルドアップをスタートさせる。センターバックのアケがボールを持った瞬間に左前方でサイドに張っていたギュンドアンが内側へランニング。そこのスペースにエドジーが流れてボールをもらい、フリーで1対1を仕掛ける場面になった。アタッカーにとってドリブルがしやすい広大なスペースがある状況を作り出した。
2-2. 新たなビルドアップからアタッキングサードへ
先程も紹介したマンチェスターシティが今シーズン取り組んでいるビルドアップの特徴は両サイドバックを内側に絞って相手を中央に密集させる戦術。新加入のグリーリッシュが投入されてからも同様の狙いが見られた。後半69:40~の場面をご覧ください。
右サイドバックのカンセロと左サイドバックのメンディが内側に絞った状態でビルドアップをスタートさせる。センターバックのアケがボールを持った瞬間に左前方でサイドのグリーリッシュが後ろに降りてきてボールをもらい、レスター右サイドバックのペレイラを引き出し、そのスペースにインサイドハーフのパーマーがランニング。レスターはボランチのティーレマンスが付いていくがパーマーに前を向かれて1対1を作られる場面に。ここはティーレマンスの素晴らしい対応でレスターは難を逃れるが、マンチェスターシティは狙い通りのボール回しが出来たように見えた。
3.レスターシティ
3-1. 新加入バートランドが見せた可能性
今夏にサウサンプトンから加入した左サイドバックのバートランドがスタメン出場していた。彼が加入したことによって左サイドから崩していく展開が見られた。前半11:02~1のシーンを抜粋してレスターが見せたプレス回避をご覧ください。
試合を通じてバートランドがいることによって、左サイドバックにプレッシャーをかけられても中央の選手にボールを配給できるようになっている。前半16:10~も同じようなシーンが見られた。バートランドはプレス回避の重要な選手として機能するだろう。今シーズンのレスターのビルドアップを見る上で左サイドバックのバートランドのポジショニングとパスコースに注目していきたい。
3-2. GKシュマイケルを経由したプレス回避
前半レスターシティのビルドアップに手を焼いていたマンCが20分過ぎから前線からのプレス強度を高めていく。GKまでプレッシャーをかけてくるマンCのハイプレスに対して、レスターが見せたビルドアップをご覧ください。
GKシュマイケルのプレス耐性の高さと安定したキックがレスターのビルドアップの完成度を高めている。GKシュマイケルがボールを持った際、センターバックは横に大きく広がりサイドバックを押し出し、GKシュマイケルからボールを受けられる位置どりをしてるシーンがこの試合で何度も見られた。前線からのハイプレスを回避すると中盤には広大なスペースがあるため、MFマディソンとMFペレスがそこを自由に使える。アタッキングサードで左サイドのMFバーンズやFWヴァーディーがゴールへ向かって仕掛ける事が可能になる。
4. 両チームビルドアップの課題
・マンチェスターシティ
サイドに広いスペースを作ってからサイドへボールを動かしたい意図を感じるが、相手がマンマークでタイトな守備をしてきた時にボールロストすると、一気にカウンターのピンチにつながってしまう。インサイドハーフがサイドに流れてボールを受ける時に相手のプレスが早いと相手を背負う受け方になってしまう。内側に絞っているためサイドバックのフォローも得づらい。前半23:20~のシーンではインサイドハーフのパーマーがエンディディを背負ってボールを受けたが、ボールを奪われてピンチになった。アタッキングサードまで運べればカウンターのリスクも軽減できるが、低い位置で相手を背負ったプレーには注意が必要になるだろう。
左センターバックのソヨンチュから素早くバートランドへボールを運べると期待感が持てるビルドアップになるが、ソヨンチュがプレッシャーを掛けられて大きく蹴らざるをえないシーンが増えるとボールロストの確率が上がってしまう。決してソヨンチュは足元の技術がない選手ではないが、判断が遅くなる場面があるのも事実だ。GKのシュマイケルとバートランドという頼れる2人が近くにいるため、ここは素早くボールを動かしたいポイント。ティーレマンスとマディソンが良い形でボールを受けられればレスターはチャンスが増えるだろう。